COFFEE BREAK[映画プロデューサー]伊藤主税が考える想生力
人・物・地に根付く営みと文化
映画と香り、映画とクラフトビール
私はこれまで全国の様々な地域で映画制作を行ってきました。他社の映画制作会社とちょっと違うのが、ただ映画を撮影するだけでなく、映画をきっかけにした地域のシティプロモーション、人材育成などを絡めた、官民一体の実行委員会を組成し、地域の方々とより深く関わりながら制作しています。映画制作を通じて町に滞在し、町の方たちが大切にしてきたこと、町の未来に対しての想いを聞いていると新しいアイデアが生まれてきます。
竹野内豊さんと山田孝之さんW主演の映画『唄う六人の女』は、6年の準備期間を経て10月27日に劇場公開。「自然との共生」をテーマに、石橋義正監督の五感を通じて生まれたオリジナル作品で、自然のシーンは「京都府南丹市芦生の森」で撮影されました。
森や自然の香りは誰にも心と体に刻まれているのではないでしょうか。大自然に囲まれながら、皆が心豊かに映画制作をさせて頂いたのですが、森の香りが私の中でも鮮明に残っています。私は森の冒険や川の遊びなど、自分の子ども時代の思い出が蘇りました。映画は視覚的なものに過ぎませんが、この香りを大切にしてきた南丹市の皆さんと共有し、映画に関連する商品を開発できないかと考え、別の映画作品で知り合った香老舗の松栄堂さまの存在が頭に浮かびました。
松栄堂さまに映画の中で描かれた南丹市の森の香りを再現できないかと提案させて頂くと、快く受け入れて頂きました。記憶に残った森の香りを吟味しながら、出演者である山田孝之さんや映画チームと共に選定し、形にしていきました。南丹市が守ってきた伝統と自然の香りを創意工夫で嗅覚的にも表現することが出来ました。
それからこの映画の特徴の一つは、マンガ原作から映画を制作するのではなく、映画原作と脚本からマンガを制作し、知的財産(IP)を開発する試みです。映画のストーリーから生まれたマンガ『劇画 唄う六人の女』(原作:石橋義正 マンガ:ヤマサキリョウ)は、集英社のマンガ雑誌「ウルトラジャンプ」に連載されています。
IP活用の可能性を模索していると、「Osaka Metro クリエイト」と出会う機会が得られました。大阪を中心とする製造企業とデザイナーをマッチングし、新たなブランドや新製品を創出する「Osaka Metro クリエイト」のプロデュースで、「六人の女」をモチーフにした6種類のクラフトビール製作が実現しました。(ブルワリー:上方ビール、Derailleur Brew Works、MARCA BREWING、中津ブルワリー、ブリューパブセンターポイント、KIX BEER、ONE’s BREWERY) 各クラフトビールのラベルデザインは、マンガ化を手掛ける、ヤマサキリョウ氏によって描き下ろされたイラストが採用され、クリエイティブ全般は大阪のデザイン会社である真ん中さまに担当して頂きました。
このように映画制作と地域の連携で、地域の宝物や文化が再評価され、地域経済への貢献を探求できたことはとても幸せなことでした。これからも映画をきっかけにした地域との想生を追い求めていき、0から”何か”を生み出す活動にチャレンジしていきたく思います。
「芦生タカラの森」の皆さんと南丹市長、映画スタッフ、出演者の桃果さんらで芦生に植樹をしました
映画『唄う六人の女』をモチーフとした6種類のクラフトビール (collaborated with Osaka Brewers Associaition)
映画『唄う六人の女』オリジナル匂い袋 (松栄堂 謹製)