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RE/SAUCEアーティストファイル
2025.02.20

コラージュアート・河村康輔を紐解く6センス

卓越した技術と豊かな感性を以て、クリエイティブ界に新風を吹き込むアーティストたち。その原動力や試行錯誤の道のり、そしてものづくりへのこだわりは、ひとつのセンス(感覚)と言えるかもしれない。そんな考察のもと、6つのセンスとともにアーティストの素顔に迫る連載企画。

第1弾は、東京のストリートから生まれたコラージュアーティスト、河村康輔さん。古くから使われてきたコラージュの手法を、シュレッダーを用いた独自のアプローチで進化させた彼には、大手ブランドのアートディレクターを担う一面も。その数奇な変遷を辿っていく。

1. じいちゃんの30万円が、クリエイティブ界への扉を開いた

「専門学校の友達のオシャレな部屋に置いてあったのが、マック。アップルは存在すら知らなかったのですが、『これはモテる!』とすごく憧れたんですよね(笑)。じいちゃんに『学校でパソコンを使わなきゃいけなくなった』とウソをついて、30万円を振り込んでもらいました。手に入れてからは1日16時間くらいマックと睨めっこ。フォトショップの機能を片端から試しながら、グラフィックや写真のコラージュをマックでやるようになったんです。僕のクリエイティブライフはここから始まりました」

2. アナログ転向のきっかけとなった“サンフランシスコ行き”

「2008年ごろにサンフランシスコに行ったとき、尊敬していたアーティストとコラージュ作品をつくる機会に恵まれました。てっきり素材がデータで送られてくると思いきや、届いたのは段ボールに入った紙の素材。最初は困惑したけど、実際にやってみたら瞬発力でものを創る感覚も気持ちよくて、その後5、6年はアナログな手法を取りました」

3. 最大の転機は、漫画家の巨匠・大友克洋さんとの出会い

「『アキラ』や『スチームボーイ』などを手掛けられた漫画家、大友克洋さんが作品を気に入ってくださって。2012年の大友さんの個展で、僕の作品を展示してもらえたんです。これが、コラージュアーティストとして、多くの人に僕の存在を知っていただくきっかけになりました」

4. 絶体絶命のピンチからシュレッダー作品が誕生

「友人が働いていた会社から、自分の作品集を出させてもらえることになったんです。でもなかなか作品が足りず……。入稿前日に、シュレッダーで砂のように細かくした紙を使った作品を思いついたのですが、翌日シュレッダーから出てきたのはタテに裁断された紙(笑)。半ば絶望しながら、段ボールに裁断された紙を貼りつけてみたら、それが想像以上にかっこよくて。周りの人からも好評で、シュレッダーを使った作品に手応えを感じました」

5. 作品を“アート”へと昇華させた、ミニマリズムへの憧憬

「シュレッダーを使い始めてしばらくすると、絵画が持つミニマリズムに憧れを抱くようになりました。絵画であれば、白いキャンバスに黒い点を置くだけでも作品になりますが、コラージュの場合、元ネタをいくつも用意する必要があります。そこで、同じ元ネタを複数コピーして一枚の作品にする、という手法であればコラージュでもミニマルな手法に近づけるのではないかと思ったんです。現在の僕の表現はこうして、確立されました」 

6. マスとアングラの行き来を、誰よりも楽しむ

「どちらかというとアンダーグラウンドな雰囲気を纏った作品が多かった僕が、世界的な企業であるユニクロのUTのクリエイティブディレクターに選ばれるとは思ってもいませんでした。周りの反応もそうでしたね。でも、マスとアングラって超セパレートもしているんですけど、僕の中では地続きでもあるんです。左脳と右脳を使っている感覚ですね。マスに向けたクリエイティブだからこそできることもありますし、両方の脳を支える環境を誰よりも楽しんでいます」

PROFILE
河村 康輔Kosuke Kawamura
アーティスト/グラフィックデザイナー。1979年広島県生まれ。コラージュアーティストとしてアーティストとのコラボレーションや国内外での個展、グループ展に多数参加。代表作に大友克洋氏とAKIRAを使用したコラージュ作品の発表(2019)、「AKIRA ART WALL PROJECT」(2019)、個展『TRY SOMETHING BETTER』(2021)など。2021年にUTのクリエイティブディレクターに就任。現在もアパレルブランドへのグラフィックワーク、ジャケット、書籍の装丁、広告デザイン、アートディレクションで活躍している。

Instagram :
@kosukekawamura

X :
@kosukekawamura
初出:「RE/SAUCE Magazine Vol.1」株式会社創藝社
(撮影:高木康行、取材・執筆・コーディネーション:武井幸久)
再編集:都恋堂

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