
思い描くのは、このブランドがなくなる未来。
第1回のゲストは、Kanako Nezzzさん。廃材とユーモアな視点を掛け合わせて、唯一無二のアートジュエリーを生み出す彼女に、モノづくりの原点を伺った。
ゴミ拾いが、アクセサリー制作のきっかけに
2020年春、東京・町田市と神奈川・相模原市にまたがる境川(さかいがわ)のゴミ拾いをきっかけに誕生した、一点物のアート・ジュエリーブランド。その名は「SAKAI JEWEL(境ジュエル)」。アーティストのKanako Nezzzさん(以下Kanakoさん)は、このブランドのエピソードを、次のように話す。
「緊急事態宣言の中、私は仕事がなくなって、お金はないけど時間はあるという状況に。その時に、以前から気になっていた境川のゴミ拾いを仲間とはじめました。川で拾ったキラキラしたガラスの破片でアクセサリーを作ったことが境ジュエルのはじまりです」

Kanakoさんのアトリエには、これまで手がけたアイテムをはじめ、アクセサリーの材料となる境川で拾ったガラス、陶器の破片、祖母から譲り受けた着物や布がところ狭しに並んでいる。モノに新たな命を吹き込むという発想は、いつから生まれたのだろうか。
「両親がほしい物を何でも買い与える教育方針でなかったこともあり、高校生のときから家にある服をリメイクしてほしいものを作っていました。気づいたら『あるものからどう作るか、どう代用できるか』と考えるのがクセになっていて。それが私の原点ですね」
足に見立てたタバコと人形の靴を履かせたピアスに、ガラス片に「ほっとけ。」と書かれた仏のタックピン。Kanakoさんならではのユーモア溢れる遊び心が詰まっている境ジュエル。しかし、表向きにはその“しかけ”は明かされていない。

「境ジュエルがゴミからできているということは、お客さんに気づかれないんです。販売会で、実はこれ……とお話しすると毎回決まって驚かれますし、その反応がとても嬉しくて」
境川のゴミ拾い活動は、今なお毎週行われていて、材料が見つかれば制作に臨んでいる。新作のペンダントトップは、海に人がゴミとともに浮遊している未来のイメージからできあがったという。ゴミがあるからこそ存在している境ジュエル。“境ジュエルがない未来”を目指して、Kanakoさんのモノづくりは続いていく。
(撮影:田淵日香里 、取材・執筆:渡邉絵梨 、コーディネーション:HAL.カトー)
再編集:都恋堂