
ゴミアート・長坂真護をつくる6センス
第7弾は、ガーナのスラム街のゴミに新しい息吹をもたらす長坂 真護さん。専門学校を卒業後留学資金を貯めるために働いた新宿のホストクラブでNo.1に輝くまでに活躍し、アパレル会社を起業するも、多額の借金を残して廃業。その後、世界放浪中に行き着いたガーナで制作を始めたゴミアート作品が大きな反響を呼んでいる。異色の経歴を持つアーティストを支える信念とは。
1. 日常を突き動かしたアフリカの地の現実
「ガーナとの出会いは、経営していたアパレル会社がつぶれた後、電子機器のバイヤーをしていた頃のことです。ある日、世界最大の電気電子機器廃棄物処理場『アグボグブロシー』のニュースをたまたま目にして。その様子を見た時に、今自分がしている仕事は、もしかしたら消費活動を早めてしまうんじゃないかって思ったんです。そこでガーナへ、自分の目でアグボグブロシーを確かめるために向かいました。これがガーナで『ゴミをアートに変える』アーティスト活動を始めるきっかけです」

2. 日常を突き動かしたアフリカの地の現実
「アート活動の中でも、スラムの海に寄付された洋服のゴミを使った作品制作が印象に残っています。制作の1年前からガーナ人の仲間たちとビーチクリーニングを始めたところ、10ヶ月後には見違えるように海が綺麗になったんです。当初、400トンもゴミを回収してどうすんの?なんて言われることもあったのですが、強くてまっすぐな思想があれば、新しいマーケットやコミュニティは自然と生まれるのだと気づきましたね」

3. 上手いか下手か、本物か偽物かは分からない
「ゴミから作ったカーボンブロックをダイヤモンドに変える新規事業にも取り組んでいます。これだけサステナブルが叫ばれている時代に、僕はここをすっ飛ばして未来には行けない。僕が上手いか下手かなんて分からないし、自分が正義なのかペテン師なのかも分からない。でも、もしこの新規事業が成功したら、カーボンブロックから作られたダイヤモンドは、天然のダイヤモンドよりも美しく輝くと思います」

4. ピカソを超えるために、報酬は5%
「100万円の利益が出たとしても、僕は利益の5%の5万円しかもらわないようにしています。そうすると、もっとお金を稼ぐために、絵をいっぱい描きたくなるんです。本当は、年収4億取ってもいいくらいなんですが、結局、僕は金じゃなくて、偉大な絵描きになりたい。作品数ではピカソを超えたい。チャレンジをしたいだけなんです」

5. 自分のエゴも、どうせなら世の中のプラスに
「消費社会に対する批判意識はほとんどありませんね。これは『持続的可能な社会を目指さなければ、地球はなくなるだけだよ』というアートを通した提案です。もちろん、発展なき成長はないと思っています。僕の中にだって野心は存在していて、金も欲しいし名声も欲しい。だからこそ、その欲望を良いことに使います。『作品数でピカソを超えたい』という僕の個人的な夢も、サステナビリティと個人的な欲望がうまく混ざっているんです」

6. 守りたいのは自分を変えてくれた土地、ガーナ
「僕の活動は、今後もガーナだけ。だって僕、ガーナに出合っていなかったら、作家になれていないので。一生恩返ししていかなきゃいけないと感じていますし、すでに彼らの住んでいる街の1万人全員の雇用も約束しています。達成しなければ地獄に落ちると思っていますよ」

(撮影:TAWARA、取材・執筆:武井幸久、コーディネーション:HAL.カトー、取材協力:日本橋三越本店)
再編集:都恋堂