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中嶋イッキュウ中嶋イッキュウの自由研休 by 中嶋イッキュウ
2025.02.20

中嶋イッキュウの自由研休vol.1〜REMAKE〜

ある時から「サスティナブル」や「SDGs」という言葉をよく聞くようになった。ファッション界でもハイブランドから個人のブランドまでが環境問題に向き合って商品を作り、そして「環境問題に向き合うこと」が「最先端のブランド」という印象にもなっていたと思う。

私の職業はバンドマンだが、服を作るのが好きで、気まぐれに自分の作りたい服を作り、SUSU by Ikkyu Nakajimaという名前で販売している。様々なファッション業界の取り組みを見ていて、自然と「自分には何ができるか」考えていた。

ファッション業界の課題として問題視されていることは、まず安価な商品を大量生産し、売れ残りを大量廃棄する生産背景だ。2020年時点で日本の衣料廃棄物は年間50万トンを超え、その中で焼却・埋め立て処分されるのは90%以上と推測されていた。自分で何か商品を作っている人なら誰でも感じることだと思うが、衣類に限らずありえないほど安価で売られているものが多すぎる。

布などの材料費、工賃、デザインを考え、それを形にする労力……などを考えると、ファストファッションに値段の安さで勝てるわけがないが、安さゆえに気軽に購入でき、すぐに廃棄され、また新たな流行りものが安く出回る仕組みができている。誰にも意見されず、個人で好きに服を作れる環境にある自分は、商品ではなく作品を作ろうと思った。

大袈裟すぎるが「もう二度と新しい服はいらない!」と思えるほど心が満足する特別な服を作れば破棄問題につながる価値観を身の周りからでも少しずつ変えられるかもしれない。ブランドを始める前に決めていたのは「破棄を作らない事」だったので、いつもロットは売り切れるギリギリくらいを目指していた。

そのスタンスのおかげで売れ残りも少なかったが、数少ない在庫を倉庫から引き上げ、切ったり塗ったり染めたり絵を描いたりして作品にした。リメイクするのは初体験だったし簡単には行かなかったが、手伝ってくれる仲間と共に一つ一つ挑戦するのは新鮮で楽しかった。そして会場を大きなゴミ袋に見立て、ブラックシートで覆って個展を開いた。

一度不要とされたものを一つ残らず破棄せずに生まれ変わらせること、そして購入者自身が「捨てたくない」と思えるほど気に入ったものしか買わないことが一番のSDGsではないかと私の中では理解したし、自分のできる範囲の取り組みだったと思う。結局何であろうが捨てないのが一番いい。私は保護犬を飼っているが、気軽に購入できる環境が気軽に手放す思考を作るということは全てにつながっていると思う。SNSなどの普及で新しいものに目が向きやすい世の中ですが、同じくらい「再生」にも目を向けるときっと豊かでいられると思います。

PROFILE
中嶋 イッキュウIkkyu Nakajima
2010年にバンドtricotを結成し、ギターボーカル、作詞作曲、グッズデザインを担当。自主レーベルBAKURETSURECORDSを設立。2016年、自身のブランド SUSU by Ikkyu Nakajimaを立ち上げ、同名義での楽曲制作も始める。アーティスト、タレント、デザイナーとして幅広く活動している。

「中嶋イッキュウの自由研休」について
tricotやジェニーハイのヴォーカルをはじめ、アーティスト、タレント、デザイナーとして幅広く活躍する、中嶋イッキュウ。環境問題や社会課題にも深い関心を持つ彼女は、たびたび作品やプロダクトの開発を通してそれらにアプローチしている。日々、新しい挑戦(研究)を続ける彼女の試行錯誤と取り組みにかける思いを、イッキュウ本人が綴っていく連載エッセイ。
初出:「RE/SAUCE Magazine Vol.1」株式会社創藝社

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「処 すギ留(SUGIRU)」は、RE/SAUCEプロジェクト がモノづくりの“再興“と”再構築“をテーマに、日本の伝統美と職人の技術、アートと革新が共鳴する場所です。
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